2025年に放送予定の大河ドラマ「べらぼう」の主人公、蔦屋重三郎に焦点を当てた書籍『これ1冊でわかる! 蔦屋重三郎と江戸文化』が、株式会社Gakkenより2024年9月12日に発売されました。
蔦屋重三郎は、現代でいうレンタルショップ、小売店、卸売業者、出版社、広告代理店を兼ね備えた、まさに「江戸のメディア王」とも呼ぶべき人物でした。彼が中心となって、それまで上方(京都、大阪)に偏っていた文化の中心を江戸に移したほどの影響力を持っていたのです。
本書では、そんな蔦屋重三郎の驚くべき生涯とビジネス手腕、そして彼が活躍した江戸時代の文化について、オンライン予備校「スタディサプリ」で社会科9科目を担当する「日本一生徒数の多い社会科講師」である伊藤賀一氏が、分かりやすく、かつ面白く解説しています。
蔦屋重三郎と深く関わった浮世絵師や文人、例えば東洲斎写楽、喜多川歌麿、葛飾北斎、北尾重政、朋誠堂喜三二、山東京伝、恋川春町、大田南畝、十返舎一九、曲亭馬琴といった著名な人物たちの生涯や作品も、豊富な画像とともに紹介されています。歴史に詳しくない人でも、当時の江戸の街並みや文化をリアルにイメージしながら、楽しく読み進めることができます。
さらに、本書は「蔦屋重三郎の生涯」「蔦屋重三郎の仕事術」「写楽の作品と謎」「蔦屋重三郎が関わったアーティスト」「蔦屋重三郎の時代の江戸文化」といった章立てになっており、大河ドラマを見ながら疑問に思ったことや、理解が深まらない箇所があれば、すぐに調べられるようになっています。これは、ドラマファンにとっても嬉しいポイントと言えるでしょう。
本書では、江戸時代の文化や社会についても詳しく解説されています。例えば、江戸の遊郭「吉原」の様子、庶民の娯楽、読書文化、印刷技術、人気を博した黄表紙についてなど、多岐にわたるテーマが取り上げられています。
歴史好きはもちろん、大河ドラマファン、江戸時代や浮世絵に興味がある方、そして蔦屋重三郎という人物についてもっと知りたいという方にとって、本書はまさに「令和の娯楽本」と言えるでしょう。蔦屋重三郎と江戸時代の文化をまるごと楽しめる、一冊となっています。
【本書の主な内容】
第1章:メディア王・蔦屋重三郎の生涯
第2章:敏腕プロデューサー「蔦重」のすごさ
第3章:謎の絵師「東洲斎写楽」
第4章:蔦重が見出した江戸のアーティスト
* 第5章:もっと知りたい! 江戸と蔦重
【著者プロフィール】
伊藤賀一氏は、1972年生まれの歴史学者で、現在はスタディサプリで社会科講師を務めています。数多くの著書があり、「日本一生徒数の多い社会科講師」として知られています。
『これ1冊でわかる! 蔦屋重三郎と江戸文化』を読んだ感想としては、蔦屋重三郎という人物の凄さと、彼が築き上げた江戸文化の隆盛を改めて認識することができた点が印象的でした。
現代でいう複数のビジネスを複合的に行い、莫大な富と影響力を築いた蔦屋重三郎ですが、単なるビジネスマンではなく、文化の発展に大きく貢献した人物であることが本書を通して理解できました。特に、才能ある絵師や作家を発掘し、育成することで、江戸の文化シーンを牽引した点は特筆に値します。東洲斎写楽、喜多川歌麿、葛飾北斎といった、現在でも世界的に有名な芸術家たちを支援した蔦屋重三郎の慧眼と情熱は、まさに「メディア王」の名にふさわしいと言えるでしょう。
本書は、歴史の教科書のような堅苦しいものではなく、伊藤賀一氏の軽妙な語り口で、まるで物語を読んでいるかのような感覚で江戸時代の世界に没頭できました。豊富なイラストや図版も効果的で、当時の様子をより鮮やかにイメージすることができました。
特に興味深かったのは、蔦屋重三郎がいかに人材の育成に力を入れていたかという点です。彼は単に才能ある人物を発掘するだけでなく、彼らを育成し、活躍できる場を提供することで、江戸文化の発展に貢献したのです。これは、現代のビジネスリーダーたちにとっても学ぶべき点が多いのではないでしょうか。
また、蔦屋重三郎が経営者としてだけでなく、狂歌師としても活動していたという点も興味深かったです。彼が文化人としても活躍していたという事実は、彼が単なる商人ではなく、時代を彩る文化人としての側面を持っていたことを示しています。
本書は、2025年の大河ドラマ「べらぼう」を見る前に読んでおくと、ドラマをより深く理解できる一冊だと思います。蔦屋重三郎という人物や、彼が築き上げた江戸文化について興味がある方は、ぜひ手に取ってみてください。
ただし、本書はあくまでも入門書であり、蔦屋重三郎や江戸文化についてより深く知りたいという方は、他の書籍や資料も参照する必要があるかもしれません。しかし、本書は、蔦屋重三郎と江戸文化への興味を広げるための、良いきっかけとなる一冊であることは間違いありません。
大河ドラマ「べらぼう」の放送が待ち遠しくなる、そんな一冊でした。